前回の記事で、証人喚問は彼にとって汚名返上のチャンスと書いたが、大方の予想通りさうはならなかった。すべてを明らかにするのがチャンスを生かす事だったのだが、彼はさうしなかった。国民ではなく、安倍首相からの評価を優先したものと思はれる。安倍晋三・昭恵夫妻の関与否定する事で安倍晋三の失脚を防いだのだから政権にとっては有難い事に違ひなく、佐川氏には何らかの見返りがあるのだらう。それは恐らく人事で、頃合ひを見てどこかに天下りさせてくれるといふ見通しなのだらう。まだ60歳、あと30年ほど寿命がありさうだが、退職金と年金で細々(一般人よりずっと優雅だが)と暮らすより、天下り先で高い報酬と退職金をもらふのを繰り返す方がよいといふわけだ。


 参考になるのは前川喜平氏だ。彼は文科省を辞めた後、加計学園の問題について安倍首相の関与を指摘したり、今回の改ざん問題についても安倍政権に批判的な発言をしてゐる。出会い系バーの件で、発言の信憑性を下げる企みに陥れられたが、今ではあちこちに引っ張りだこだ。その状態は彼にとって幸せなものらしく、佐川氏に対する呼びかけとして「本当の事を話すと幸せになれる」と発言してゐた。官僚時代は本当の事が言へない、これは十分に察する事ができる。

 佐川氏は、官僚を辞めてしまってからも本当の事を言はずに通すつもりらしい。彼は「それが幸せになれる」道と考へたのだらうか。それとも、幸せでなくてもいいから地位や収入などによる心地よさを選んだのだらうか。


 いづれにしろ、安倍政権は当面の危機から脱したが、支持率は回復するだらうか。支持しない理由で最も多いのが「首相が信頼できない」と伝はってゐるし、与党内からも批判が起きてゐるので、簡単には回復しないと思はれる。もっとも、別の理由で支持が増える事もあり得るので、ふた月くらい様子を見る必要があるだらう。自ら政権を手放す事はないものの、総裁三選はできず、安倍政権はあと半年で終わり・・・といふのが私の予想である。
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 森友学園の問題が、3月2日の朝日新聞の報道があってから急速に動いた。大阪財務局の職員が自殺、佐川氏が国税庁長官を辞任、その佐川氏が国会に証人喚問されることになりさうだ。

 朝日の報道は、森友学園の土地取得に関する公文書が書き換へられてゐたといふもので、それは事実なのか、どう書き換へられたのかなどで賑はったが、今週になってそれらが明らかになった。

 そもそもこの問題は、学園が新しく小学校を作るために国有地を取得したのだが、取得に至る経過や価格が不自然で、それが安倍晋三首相が関はってゐたゆゑではないかといふ疑惑である。これまでに明らかになった事から推測すると、安倍首相自身より夫人である昭恵さんの関与があったやうだ。明確な証拠があるわけではないが、通常の判断力があれば自然に導かれる推測だ。

 昨年2月にこの件が初めて取り上げられたのだが、国会で安倍夫妻の関与を質された際に、自分や妻が関はってゐたなら総理大臣も国会議員も辞めるといふ発言があった。それは予め準備されてゐた答弁ではなく、気色ばんで落ち着きなく発せられたものだった。

 前後して、佐川理財局長による「法に従って適正に処理された」との答弁もあったのだが、公文書の書き換へ(改竄と言ふべきだらう)は、その10日ほど後からひと月以上かけてなされてゐた、と今回発表されてをり、改竄の内容には昭恵さんの名前が出て来る部分の削除もあった。安倍首相や佐川氏の答弁とつじつまを合わせるための改竄、と誰もが思ふだらう。公式発表では、佐川氏の答弁との整合性を図ったものとされたが、その佐川答弁自体が昭恵さんの関与を否定するものなのだ。

 昭恵さんの関与が明らかになれば安倍首相が失脚するわけで、官邸に人事を握られてゐる高級官僚たる佐川氏はそれを隠す事にしたのだらう。その結果、国税庁長官に出世した。ただ、理財局長から国税庁長官へといふコースは特別ではないらしいので、単にスピードだけだったかもしれない。それにしても今日、国会での首相の発言には驚いた。「改竄前の文書を見ても私や妻が関はっていないのが明らかだった」と言ったのだ。改竄前の文書には、籠池氏が、ある場面で昭恵さんが彼に話した内容を紹介してゐる部分があった。それが昭恵さんの関与を示してゐるとは言へないものの、疑はせるに十分だ。百歩譲って疑へるとは言へないとしても、関与がないことが明らかとは全く言へない。野党が出席してゐないのでヤジもなかったが、中学生でも分かるやうな事が安倍晋三には分からないのだらうか。


 さて、公文書の改竄には刑事罰があるが、今日の「ひるおび」で八代弁護士が解説したところによれば、今回のやうに、公文書を作成する立場にある者が決済後のものを改竄しても簡単には適用できない。そもそもさういふ事態を法は想定してゐないといふのだ。ただし、虚偽の報告によって国政を歪めたといふ結果を考慮し、偽計業務妨害に問はれる可能性がある。

 すると、改竄に携はった官僚たちは、改竄自体で罪を問はれることにはならない。問題は何故そんな事をしたのかで、これも犯罪とされるわけではないから、証人喚問で佐川氏が真実を述べる事に期待する。昭恵さんの関与が証言されるとは思へないが、安倍晋三への忖度を明言するだけでも国民から喝采を受けるだらう。彼は虚偽答弁を疑はれ、国税庁長官になっても会見をしないなど散々悪評されてきたが、辞任した以上忖度する必要はない。汚名返上の大チャンスである。

 
 それはさておき、このやうな事態は国家にとってどの程度重大なのだらうか。まづは官僚による公文書改竄だが、これは改竄の内容は別としてあってはならない事である。法が想定してゐないのは、些細な事だからではなくあるはづのない事だからだ。ここで、オーウェルの「1984年」が想起される。主人公は「真理省」に勤務してをり、新聞や歴史記録を書き換へるのが仕事である。それは「党が常に正しい」といふ状態を作り出すためだ。官僚による公文書改竄の究極にあるのはさういふ状態である。

 極端に走ってしまったが、官僚が作る公文書の多くは行政の記録であり、後世の検証も受ける。それが時の政権の都合に合はせて改竄されるのは、遠い昔ならいざ知らず、民主主義の時代ではとんでもない事なのだ。

 また、改竄の理由は昭恵さんの関与を隠すためだらうが、関与が事実で、それゆゑに籠池氏が行政上有利な扱ひを受けたのであれば、行政の私物化に他ならない。加計学園の件にも通ずる事だが、それが許されない事であるからこそ、安倍首相自身も、首相はもちろん議員も辞めるとまで言ったのだ。

 だから、国家にとっての重大さの程度はかなり高いといふ結論になる。国の根幹を揺るがすやうな問題ではないといふ意見もあるが、まさに根幹に関はる問題だと思ふ。野党が追及するのは当然だし、今では与党内からも安倍批判が出始めてゐる。ただ、野党がまだ審議に応じてゐない事には賛同できない。佐川氏の証人喚問が実現する見通しになったのだから、今日から委員会に出席するべきだった。昭恵さんの喚問も要求してゐるのだが、実際には無理だらう。それに拘泥するより、譲歩といふ形で取り下げる方が得策だらう。課題はこれだけではないのだから、拒否を続け過ぎると国民の支持を失ふ事になる。
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 特別国会は、総選挙の結果を受けて首班指名から新しい内閣の発足といふ手続きのために招集される。だから会期は短いのが普通だ。しかし、今回はかなり長い。それは、野党の要求を無視し続けた末にやうやく開催した臨時国会を冒頭で解散してしまったため、審議ゼロだった事を考慮したからだ。ところが、審議に入る前に質問時間についてのゴタゴタがあった。与党の質問時間を増やせといふのが発端だが、私はこのニュースで初めて、与野党の時間配分が2:8であるのを知った。

 国会中継を見ること自体少ないが、与党議員の質問は提灯持ちといふ印象である。そもそも、国会での質問は政府の提案に対するものであり、多くは疑問点を追及する。与党議員はその提案の作成に携はる立場であり、疑問点があればその段階で説明を受け、納得したり修正したりが可能である。もっとも、すべての議員が携はるわけではないから、国会の場で質問したいと考へる議員がゐても不思議ではない。しかし、実態は提灯持ちでしかないのだから、それは単なる可能性の話だらう。

 報道によれば、国会で質問する機会のない若手議員の、選挙区で「仕事をしてゐないのではないか?」と言はれるから質問してゐる姿をTVで見せたい、といふ要望から始まったらしい。そして、党総裁たる安倍首相が議員の数に応じて質問時間を配分するのは合理的と言ったやうだ。それで与野党の協議が行はれる事になったのだが、相変はらずこの人物は三権分立や議会制民主主義を分かってゐない。

 自民党は当初7:3と言ってゐたやうで、まさしく議員数に応じた配分だった。ただし、それが通るとは考へてをらず、実際の協議では5:5を主張した。野党は従来通りの2:8を主張し、結果として1:2となった。

 さて、代表質問に先立って加計学園に関する審議があり、そこでこの時間配分が適用されたのだが、トータル80分の与党の持ち時間のうち、義家議員が30分を使った。彼は、総選挙前は文科副大臣であり、その問題で質問に答へる立場だった。さういふ人物が質問に立って、安倍の言ふ「丁寧に説明する」内容を引き出す事になるはづがない。義家は、総理のご意向、一般的に第三者の意向が反映するかといふ質問を発し、さういふ事はないといふ官僚の答へに対して、「具体的かつ丁寧な説明に感謝する」と言った。茶番としか言ひやうがない。

 加計学園の件には様々な疑問が出されてゐる。首相の友達だから優遇されたのではないかといふのが発端だが、獣医学部の実情についても、本来求められるレベルに達してゐないとか、教員が高齢でかつ数も足りないとか、果たして認可が妥当かといふ疑問まであるのだ。それらが最終的には安倍・加計の個人的関係に帰着する可能性があり、それこそが最大の疑念なのだが、臨時国会を開催しないことから突然の解散、質問時間の問題に至るまで、そこに追及が及ぶのを避けるための手段だったと見るのが自然だらう。会期はまだ残ってゐるが、首相の外遊などもあってさほどの事は期待できない。年内をなんとか乗り切れば次は通常国会であり、予算案の審議といふそれこそ重要な課題が最優先される。そこに盛り込む事はできても多くの時間を割くのは無理で、うやむやのまま次第に記憶が薄れるといふ、狙ひ通りの流れになる事が予測される。



 少し脱線するが・・・・・森友学園の事も含めて、これらを「どうでもいいことに時間をかけてゐる」とする見方がある。重要な課題が山積してゐるのに個人攻撃のやうな事をやるのは問題だ、といふわけだ。

 確かに重要な課題は他にもたくさんある。しかし、これらも重要な事であり、ましてや「どうでもいいこと」では全くない。事は行政の私物化であり、事実であれば安倍本人も言った通り辞任に値する問題なのだ。安倍晋三といふ人物に個人攻撃を仕掛けてゐるのではなく、内閣総理大臣といふ公人の現状があるべき姿なのかどうかといふ疑問を追及してゐる。「どうでもいいこと」とするのは、行政を私物化しても構はないといふ事であり、まともな見識に基づいた言葉とは思へない。
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 「大義なき解散」による総選挙が終盤にさしかかってゐるが、メディアの予測では自民党が勝ちさうである。現有議席を減らすとしてもわづかで、増える可能性の方が高いらしい。従って単独で過半数を獲るのは確実、公明党は現状維持になりさうで、与党が三分の二を占める事も十分ありさうである。安倍首相は「与党で過半数」を勝敗ラインとしてゐたが、それは希望の党ができる前のものであり、激変した野党の様相によって情勢も変化してゐる。

 野党の様相と言へば、当初は実に分かりにくかったが、公示を経て少し分かりやすくなった。小池百合子は、安倍一強を終わらせると言ってゐたが、政策面では自民党と大きな違ひがなく、単に安倍を首相の座から降ろしたいだけのやうである。前原民進党は、やはり安倍政権を倒したいのだが、その方法として野党の共闘ではなく一本化といふ道を選んだ。しかし、政策に関する踏み絵を提示されて分裂する事になった。これが小池前原会談でどこまで話されてゐたのかが疑問だが、枝野の新党結成を「想定内」と発言したので、どうやら知ってゐたと思はれ、ならば裏切りと言へるだらう。

 だから、枝野の行動は筋を通したものだが、それに加わる者が少ない事には失望した。それでも30議席ほどを獲れさうだと予測されてゐるのは、私と同様に考へる人がかなりゐる事を示してゐる。

 前原は元々民進党内の右派と言はれてをり、小池と合流したのは、アメリカ流の二大政党を目指したものだらう。アメリカは、社会主義・共産主義といふ意味での左翼は無視できるほどであり、資本主義社会を全面的に肯定した上での二大政党が時々政権交代を演じてゐる。ソ連崩壊で共産主義の敗北が明らかになり、数少ない共産主義国家も資本主義の様相を呈してゐる現代、その方向は世界史的必然なのかもしれない。

 であるならば、共産党や社民党は衰退するのが当然の流れで、その存在意義は根本的に反自民といふ点だらう。立憲民主党も上記の意味での左翼ではないが、根本的な部分での反自民といふところで彼らと共闘できるだらう。

 かくして、三極構造となった今回の総選挙は、自公が300~310、希望が70~80、立憲・共産・社民が60~70、残りがその他といふ結果になりさうである。二大政党とは言へないが、あと数回選挙があれば、立・共・社が凋落してアメリカに近くなるかもしれない。

 ともあれ、閣議決定で憲法解釈を変更し、それに基づいて強引に成立させた安保法制を支持する勢力が三分の二どころか85パーセントほどを占め、そのトップが安倍晋三といふのは、重大な事態である。その先には戦前回帰の改憲が想定されるからだ。この予測が当たるならば、日本の黄昏である。黄昏の先には暗闇が待ってゐる。アメリカが主導する戦争に協力し、その状況のもとで個人の自由がどんどん制限される事になりかねない。仮に改憲しなくても、解釈変更と安保法制、更には特定秘密保護法が有効である限り、その危惧は消えない。時事通信のオンライン記事(10/13)によれば、昨年夏に、安倍は改憲は必ずしも必要ではなくなった、なぜなら安保法制が成立した事で集団的自衛権の行使についてアメリカから要請がなくなったからだ、と田原総一朗に語ったといふ。これほど明確にアメリカの意向に沿ふ政治を認めるのは珍しいが、分かりやすいとは言へる。

 願はくは、まだ投票先を決めてゐない半分強の有権者の票が立・共・社グループに流れてほしいものである。さうならないとすれば、70年経って定着したかに見える日本国憲法の根幹を、実は多くの人が理解してゐないとせざるを得ない。敢て言へば、私の予想は悲観的である。
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 15日にまたJアラートが鳴った。その日はゆっくり寝てゐられるはづだったが、自然な目覚めよりおそらく2時間ほど早く起こされてしまった。またも北朝鮮のミサイル発射である。TVが危機感を募らせるやうな報道番組を流してゐたが、言葉の本来の意味での「杞憂」だと私は思ふ。

 杞の国のある男が、天が崩れ落ちてくるのではないかと心配し、食事ものどを通らず夜も眠れずにいた、といふのが「杞憂」の由来だが、細かく言ふと、月や星が落ちてくることも心配したらしい。日本に落ちる心配のないミサイルにJアラートやエムネットをを発動して騒ぎ立てるのは、まさしく彼の心配と同じだ。不安を抱きながら屋内でじっとしてゐたといふ人もゐるやうで、それには失笑したが、自治体や報道機関の職員などは緊急出勤せざるを得ず、時間外手当だけでもかなりの損失だらう。また、交通機関が一時的にストップしたのも損失で、もしあと30分くらい遅ければ企業の活動にも影響が出ただらう。

 そんな損失を強いてまで発動させるのは、安倍政権の策略といふ印象がある。つまり危機感を煽って安保法制の正当化や戦争ができるやうにする改憲への機運を高める狙ひだ。私は、自衛隊の明確な位置づけや自衛戦争を肯定するための改憲には原則賛成の立場だが、理屈でなくムードで進めるのには賛成しない。特に安倍晋三は戦前回帰を目論んでゐるので、彼の思想が色濃く出る改憲には絶対反対である。

 Jアラートに敏感に反応する人は、失礼ながら判断力に乏しいと思ふ。しかし、ウソでも繰り返し言はれるとついには真実と思ってしまふのは人間の性で、ヒトラーはそれを利用した。安倍もヒトラーに倣ってゐるのかもしれない。やはり、彼にはできるだけ早く首相の座を降りてもらひたいものだ。

*9/27追記
 明日、臨時国会の冒頭で衆議院が解散される運びとなった。大義なき解散と言はれてをり、全くその通りなのだがもはやその流れを止める事はできない。この上は、安倍退陣が余儀ないほどに自民党を負けさせる事が望ましい。勝つのは、民進党でも希望の党でも共産党でも構はない。

 
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