今月号の「正論」にこの人の文が載っていた。タイトル(忘れたがw)とまだ18歳の女の子というのに興味を惹かれて立ち読みしたのだが・・・。


 大学生に「日本はいつ誰によって建国されたか」という質問をしたところ、「紀元前660年に神武天皇が」という「正答」は数百人中わずか二人だった、という報告を知って驚いた、というのが枕になっている。そして、日本の歴史教育はおかしいという主張を展開していた。

 驚いたのは私の方だ。この年齢で、それを「正答」とする人がいようとは・・・。略歴が書いてあったが、特に皇国史観を身につける環境にあったようには見えなかった。本人も、「正答」者がそういう環境で育っていたこと、従って一般人はゼロであることを嘆いているので、独自に身につけたと思われる。


 彼女は、独立戦争とジョージ・ワシントンを知らないアメリカ人や、64年前の建国と毛沢東を知らない中国人はいないだろうとし、それに比べて・・・と嘆く。しかし・・・

 アメリカの建国はわずか237年前で、しかも非常にはっきりした形でなされており、教えるのも簡単である。中国については、ここでは中華人民共和国を指しており、「ついこの間」のようなものだからリアルタイムで経験した人さえ存命中かもしれない。ところが、日本を「いつ、誰が」建国したかは分かっていない。彼女が「正答」とするのは歴史的事実ではなく、日本書紀の記述をそのまま信じるというイデオロギーである。

 イデオロギーを歴史的事実とするのは誤りなのだが、本人はそれに気づいていない。そのことが私には二重に驚きだった。そんな「皇国史観少女」に、この国の歴史教育は・・・などと論ずる資格はない。とはいえ、こういう主張は前世紀末あたりから盛んになってきた右翼勢力のそれと全く同じで、むしろ罪は彼らにある。彼女はおそらく西尾幹二とか藤岡信勝などの著作を多く読んできたのではないだろうか。もしそうならば、「つくる会運動」などの申し子(被害者?)と言えるかも知れない。

 思想・信条は自由だからイデオロギーは人それぞれで結構だが、イデオロギーと歴史的事実の区別はしっかりつけねばならない。現在、マルクスが批判されているが、それは共産主義の元になっている唯物史観が必ずしも歴史の正確な説明になっておらず、社会・共産主義革命も資本主義の未成熟な国で起こったことを主な論拠にしている。右翼勢力は共産主義を毛嫌いするが、その本家と同じ過ちを犯しているのだ。



 さておき、自分の国の「建国」を知りたいと思うのは自然なことだが、何としても正確に知らねばならないというものではないだろう。特に日本の場合は、少なくとも今のところ知りようがないのだ。誰もが知っている邪馬台国や卑弥呼も、この列島に存在したことは確かだが、それが現在の日本国につながるものなのかは不明だ。仮につながっているにしても、卑弥呼が建国者ということにはならない。それ以前は男王がいたのだから。そしてそれが107年に朝貢した帥升とつながっているかどうかもわかっていない。通説では崇神天皇からだが、その時期は4世紀半ばとまでしか言えないし、崇神が「建国者」だったと確定できるわけでもない。「建国者」の定義にもよるので微妙ではあるが。

 だから、学校の社会科で「いつ誰によって建国されたか」を教えることは不可能で、「四世紀半ば頃大和地方で現在の日本につながる国家が成立した、そして八世紀初めに正史が編纂され、そこには神武云々と書かれているが歴史的事実とは言えない」というくらいが妥当なところだろう。


 一応付け加えると、私はイザナギ・イザナミ以下、天照大神やスサノオ、神武、ヤマトタケルノミコトなどを知る必要がないとは決して言わない。むしろ、知るべきと考えている。それらは面白い物語で文学的な価値もあり、何よりも多くは我々の祖先による伝承だからだ。それら神話の類は国語教育にとりいれられるべき、と40年以上前から考えている。
スポンサーサイト
line
line

line
プロフィール

丸山恒平

Author:丸山恒平
FC2ブログへようこそ!
1949年1月生まれ、還暦を期にブログを始めました。記述することは多岐にわたります。
コメント歓迎・反論歓迎・トラックバック歓迎・リンクフリーです。

BLOGRAMに登録しています。できればカレンダーの下のタグをクリックしてください。

line
最新記事
line
最新コメント
line
最新トラックバック
line
月別アーカイブ
line
カテゴリ
line
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
line
カレンダー
03 | 2013/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
line
フリーエリア
line
フリーエリア
line
sub_line
検索フォーム
line
RSSリンクの表示
line
リンク
line
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

line
QRコード
QRコード
line
sub_line