輸出物価指数を輸入物価指数で割った値を「交易条件」と言ふさうだ。初めて知った述語だが、先進国ではこれが低下傾向にあるらしい。「資本主義の終焉と歴史の危機」(水野和夫、集英社新書)といふ本によるのだが、主題はタイトルの通りで、それを説明する指標の一つとして紹介されてゐる。

 日本での交易条件の推移が2000年を100としたグラフになってをり、1955年第2四半期から1973年第3四半期まではトレンドとして120から140に上昇してゐる。そしてオイルショックでガクンと落ちるのだが、合理化や省エネ技術によって、再び上昇トレンドになる。具体的には、1973年第4四半期から1999年第1四半期まで95から110へのトレンドを描く。しかしその後、つまり1999年第2四半期からは急速に下降線をたどり、2012年には70を割り込んでしまふ。

 資本主義は中心が周辺を収奪するものであり、グローバルに見た場合、中心とは先進国、周辺とは後進国あるいは発展途上国を意味する。つまり、先進国は後進国の資源を安く買ひ、工業製品を高く売ることで資本の増殖を可能にしてきた。オイルショックに象徴される資源価格の高騰で交易条件は悪化したが、それは一時的なもの(とはいへ約10年続いた)だった。しかし1999年からの低下は新興国の近代化が背景にあり、長期化は必然である。そしてこれは、先進国にとってモノ作りが割に合はなくなったことを意味する。

 更に重要なことは、新興国の近代化が周辺の喪失を意味することだ。だからこそ「資本主義の終焉」といふテーマになってくるわけである。実際にはまだ終焉とは言へないが、それはアメリカが新たな周辺を作り出したからだ、と著者は指摘する。具体的には、「電子・金融空間」を創出することで「金融帝国」化していくのだ。

 1971年のニクソンショックはドルと金が切り離されたことであり、同年インテルがCPUを開発した。これによってドルは伸縮自在となり、パソコンの普及とあいまって世界中の人が「電子・金融空間」に参加できる条件が整う。加えて金融業と証券業の兼務が認められ(1999)、「金融帝国」化が確立する。その現れとして、金融業の利益が全産業の利益に占める比率が飛躍的に上昇する。1929年から1984年までは平均9.6%だったが、1985年から2013年の平均は21.6%と二倍以上になったのだ。

 しかし、電子・金融空間にも弱点がある。それはバブルが発生しやすいことであり、バブルはいつか必ず弾けるからだ。リーマンショックはその典型例で、ある人(サマーズ元財務長官)はバブルの生成と崩壊を3年周期で繰り返すと言ってゐるさうだ。いづれにしろ、電子・金融空間による資本主義の延命にも限界があり、世界は資本主義に代はる新たなシステムを創出する必要に迫られる・・・著者はそのことを「歴史の危機」と言ってゐるわけである。


 「交易条件」のことから、本の内容の紹介になってしまったが、これはとても良い本で、現代の日本を理解するのにも大変役に立つ。一例として、非正規雇用のことを挙げてみる。派遣労働などは、元々は短期間や短時間だけ働きたいといふ人のためのものだったが、企業にとっては人件費を伸縮自在にできる意味があり、利潤率の低下に対応する方策として積極的に採用されることになる。それが実は、非正規労働者といふ新たな「周辺」を作ることになったのであり、資本主義の本質を考へれば簡単には解決できない問題であることが見て取れる。
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