この映画のタイトルだけは知ってをり、観たいと思ったのを覚えてゐるが、WIKIによれば1966年6月の作品で、受検勉強の時期だった。その後、68年3月の第5作までシリーズ化されてゐるが、今回DVDを借りて第1作を観た。主演は市川雷蔵(次郎)で恋人(雪子)役が小川真由美、他に重要人物として加東大介(草薙中佐)や待田京介(前田大尉)らが出演してゐた。

 内容は想像してゐたのとはかなり違ってゐた。訓練の様子や実際の諜報活動が描かれてゐると思ってゐたのだが、それはもちろんあったものの、主要なテーマはスパイである事の非情さだった。また、意外だったのは軍の幹部を批判してゐる事だった。それが史実かどうかは不明だが、創設者の草薙中佐は、将校たちは自分の出世を考えるだけで大局を見てをらず、その為諜報活動の重要さを理解してゐない、だから予算も少ないと嘆き、友人の参謀本部大佐に予算を回してくれと頼んだりする。

 そして、スパイの理想的な姿を日露戦争時代の明石大佐に求める。それは忍法で言ふ「草」に似てをり、敵地に溶け込んで生活し、かの地を内部から崩壊させるといふ活動である。開校当初に、一人の優秀なスパイは一個師団に相当する事を説明してゐるのだが、明石大佐はロシアに潜入してレーニンを動かし、ロシア国内を混乱させて日露戦争の勝利をもたらしたのであり、そのやうになれば一師団どころか一国に相当する、そしてスパイの精神は「誠」であると言ひ、生徒たちを心酔させる。


 さて、主人公次郎は陸軍少尉として勤務に就くが、ある日草薙に面会し、いくつかの奇妙な質問を受ける。数日後、陸軍省に赴く事を命じられ、ある粗末な建物に連れていかれる。そこが「学校」であり、次郎と同じ立場の者が18名ゐた。すべて普通の大学を卒業後、予備士官学校を出た新任の少尉で、スパイには普通人の感覚が必要といふのが大卒から選んだ理由だった。そして、偽名を名乗り、一切外部との接触を断つ事を命じられる。「奇妙な質問」は、実は選考試験なのだった。

 婚約者である雪子は、消息の途絶えた次郎を探すため、タイピストとして勤務してゐたイギリス人経営の会社を辞め、参謀本部の暗号班に勤める。その際力になってくれた前田大尉から、結婚を前提とした交際を求められる。前後して、イギリス人の社長から次郎が銃殺されたと聞かされる。理由は反軍的な言動とされてをり、そんな陸軍への復讐としてイギリスに協力する事を求められ、承諾する。実は彼もスパイだったのだ。

 一方、次郎はイギリスの暗号コードを手に入れる事を卒業試験として命じられる。それは、前田大尉が担当する解読が成果を挙げてゐないのを知った草薙が、予算を回すことを条件に大佐に提案した事で、他に二人が指名される。そして、何の痕跡も残さずに横浜の領事館にあるコード表を撮影する事に成功する。その経過が映画としては一番の見せ場で、実に面白かった。

 ところが、イギリスはすぐにコードを変更し、せっかくの苦労が水の泡となる。前田大尉が雪子にコード表が手に入った事を漏らし、彼女からイギリス人社長に伝はったためなのだが、それを突き止めたのは次郎だった。報告を受けた草薙は、憲兵隊に捕へられ、拷問された上で死刑になるよりはお前の手であの世へ送ってやれと言ふ。

 次郎は雪子を訪ね、死んだと思ってゐた彼女を喜ばせる。そしてダンスや食事を楽しんだ後、ホテルに誘ふ。そこで三々九度のまねごとをするのだが、その際ワインにやや遅効性の毒を入れる。そしてベッドに入るのだが、間もなく雪子は絶命し、次郎は自殺に偽装してその場を去る。「今までどこで何をしてゐたの?」といふ質問には、後でゆっくり話すと言っただけで、結局何も告げずに事を終える。実に悲しい事だが、スパイになり切った次郎は冷静だった。非情と言ふしかない。
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