産科医師は犯罪者? その2

LUKIさんのコメントで、そういえば優生保護法という評判の悪い法律があったな、と思い出した。そこで母体保護法と優生保護法を手がかりにして、少し調べてみた。

 優生保護法は、1940年の国民優生法の衣替えとして1948年に施行された。国民優生法はナチスの優生思想に倣って作られたという。ナチスほどひどいものではないが、心身の疾患を劣性と捉えた上で、そういう子供が生まれないようにするための法律だったようだ。1948年と言えばベビーブームのただ中で、妊娠中絶を合法化するのが、隠された目的だったようである。もちろん、ナチス流の非人道的な思想を否定するのが表向きの立法趣旨だったと思われる。

 その後、時代の動きに合わせて何度か改正されているが、1990年代の改正で母体保護法と名称も変わった。妊娠中絶については第14条に規定がある。要約すると、本人と配偶者(不明や死亡のときは本人のみ)の同意を得て、身体的または経済的理由から母体の健康を著しく害するおそれがある場合、しかるべき医師が行うことができる、というものだ。また強姦などによる妊娠も対象となる。

 これが、産科医師が刑法の業務上堕胎に問われない法的根拠であることがわかった。しかし、現実の妊娠中絶は上の条件を極めて緩やかに適用しており、事実上野放しに近いだろう。以前は行政の審査機関があったそうだが、ある時期から医師の判断に任されるようになってもいる。長い間、年間100万件を超える手術が行われてきており、最近では30万件ほどに減っているとのことだが、それでもかなり多いし、その大半は本来なら認められないものであることが容易に想像できる。

 まあ、それぞれの事情で中絶をするわけだし、ある医師が断っても他の医師が引き受けるだろう。その医師を摘発したところで社会的に支持されるとは思えない。いたずらに犯罪者を作る愚は避けるのが賢明だ。

 とすれば、刑法の業務上堕胎の存在意義に疑問が生じてくる。事実上死に法なのだから削除してもよさそうだ。とはいえ、そういうものは軽犯罪法にもある。街路や公園などで痰唾を吐いたり立ち小便をすること、これで実際に警察沙汰になったのは聞いたことがない。「法は最小限の道徳」という言葉があるが、最後の砦のような意味があるのだろう。

 業務上堕胎には、中絶に一応歯止めがかかっていることを示す意味があるのかもしれない。あるいは、助産師・薬剤師などがこっそり薬物を都合するのを防ぐことに、存在意義が残っているのかもしれない。
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