「おちくぼ姫」  田辺聖子

ひまつぶし感覚で本屋をのぞいていたら、「ハッケン!角川文庫祭」というコーナーでこの本を見つけ、買ってきた。

 つい最近、別ジャンルの本で、「落窪物語」がシンデレラと似た話であることを知ったばかりだった。文学史か日本史の勉強で、一段低い部屋に住んでいる女の物語と覚えただけ、内容は全く知らなかったのだが・・・。タイミングよく出逢えたというわけである。

 1979年の作品で、女子中高生を読者に想定し、「落窪物語」に田辺流の味付けをしたものだが、とても面白かった。


 姫に仕える阿漕(あこぎ)という女房が魅力的な女性で、その行動が面白く、この人が主役ではないかとすら思える。阿漕は姫の乳姉妹で、幼い頃から仲良しだった姫を、継母や義姉妹たちにいじめられる境遇からなんとか救いたいと思っている。夫の惟成(これなり)は、右近の少将である藤原通頼という貴族の乳兄弟で、ひょんなことから少将とおちくぼ姫の恋の仲立ちをすることになる。それを知った阿漕は、遊びでなく一筋に姫を愛してくれなければダメとクギを刺す。惟成は板挟みになってしまうのだが・・・。

 二人の活躍で、プレイボーイの気まぐれから本当の純愛に発展した二人の恋を継母の妨害から守る。少将もなかなかの人物で、勇気ある行動で姫を救い出して自分の妻とする。そして、いじめた継母に痛快な仕返しをする。だがそれでは終わらず、和解して皆で仲良く宴会をするというハッピーエンドになっている。

 作者によると、原典はこのあともかなり長く続くのだが、急につまらなくなるそうだ。それでここで終わりにしたらしい。そういう点できっちり完成された源氏などより劣るが、中流階級の阿漕などが活躍するスピーディな展開は大きな魅力だという。


 ところで、始めの部分で作者は当時の貴族の結婚について要領よく説明している。妻問い婚というのは知っていたが、通ってくる夫をもてなすのは妻の親の役目で、親の経済力が弱かったり、早死にしたりすると娘はみじめな状態になるとか、夫に経済力がつくと妻を邸に迎え入れるとか、具体的なことがよくわかった。おちくぼ姫は、六歳で母を亡くし、父親の元に引き取られるが家を切り盛りしている正妻から疎んじられて・・・という設定なのだ。


 継母や義姉妹にいじめられ、最後に幸福になるるのはシンデレラと同じだが、魔法が使われないことや、継子いじめはサブで、少将との純愛がメインテーマになっている点など違う点も多い。そして何より、一夫多妻の貴族社会で愛情に基づく一夫一婦を貫くというのが、当時の女性の心に響いただろうし、後の時代でも受け入れられたと思われる。

 この作品がどの程度原典に忠実なのか、当然知らないが、そのうち読んでみようと思った次第である。
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