「お申し込みいただきやすい保険です」

ある生命保険会社のTVCMで聞いた言葉遣いだが、非常に違和感がある。

 「・・・する」を「・・・させていただく」と過剰な謙譲表現にすることが浸透してしまい、苦々しく思っているのだが、同じ潮流でもこれは少し意味が違う。

 敬語なしで表現すれば「申し込みをもらいやすい保険です」となる。なお、「申し込む」は本来謙譲表現だが、現代はその意味がないのでそのまま使った。生命保険は、加入しようとする者が会社に申し込み、会社が引き受けるかどうかを検討した上で契約に至るという流れなのだが、一般消費者の感覚では「保険に入る」というのが普通だろう。

 このCMが言わんとしているのは「消費者にとって入りやすい保険ですよ」ということである。ならば「入りやすい保険です」とするのがわかりやすい。「入る」を「申し込む」にしたのは、つい業界用語を使ってしまったという事で、それはここでのテーマではない。


 さて本題、「いただく」のは会社である。するとこれは「もらいやすい」の謙譲表現ということになる。しかし、アピールしたいのは「消費者が入りやすい」事なのに、いつの間にか主語が切り替わっている。つまり、消費者に「入りやすいですよ」と呼びかけるつもりが、自分が「もらいやすいですよ」という呼びかけになっていまっており、それが違和感の原因である。もっと言えば誤った言葉遣いだ。

 おそらく、「申し込みしやすい保険です」が原形で、申し込みに「お」をつけ、「しやすい」をより高度の敬語に・・・という意図だったと思われるが、ならば「お申し込みになりやすい」が適切である。ところがこれは「申し込む」を動詞として使う言い方だ。原形は名詞として使っているので混乱が起きる。その結果タイトルの表現になってしまったのだろう。動作の名詞に「ご」をつけ、「いただく」と続ける言い方(ご連絡いただく・ご安心いただくなど)は頻繁に使われており、その方式のつもりだったが「ご申し込み」とは言わないので、「お申し込みいただく」になったのではないだろうか。それを思えば、動詞の連用形を名詞として使う「申し込み」はややこしい言葉かもしれない。

 また、「いただく」を多用するうちに、「主語は誰か」ということに注意が払われなくなってしまったという事もありそうだ。似たような例があるのでそれにも触れておく。全国展開する有力なショッピングセンターの館内放送であるが・・・

 曰く、「当店では、お客様が快適にお買い物をしていただけるよう、・・・しております。」なのだが、これも主語と述語の関係がおかしい。「いただく」のは当店だから「お客様に・・・」が正しい。もし「お客様が」を生かすなら、「お買い物ができるよう、・・・」とでもするべきだろう。

 実は、このショッピングセンターにそれを指摘するメールを送ったのだが、それへの回答の主要部分は「今後、放送内容の見直しの際には、ご指摘内容を参考に検討をして参りたいと存じます。」というものだった。それから1年半ほど経っているが、放送はそのままである。見直しをしていないのか、したけれど訂正の必要はないと判断したのか、不明だがどちらにしても情けない話だ。そのうち確かめてみようか・・・。
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