ある饅頭にまつわる理不尽なこと

 10年近く前のこと、私の卒業した大学が、大学の名前を冠した饅頭を作った。国立大学が独立行政法人になり、自学の存在をアピールする努力が求められるという状況に対応した試みだった。

 それを推進した当時の学長は、私が4年のとき、ある事情から臨時にゼミを受け持ってくださったA先生である。卒業後も交際があったので、経緯の説明を沿えてそれを送ってくださった。試食すると大変美味で、すっかり気に入ったのだが、その後食べる機会に恵まれなかった。

 昨日その地を訪問したので、ふと買って帰ろうと思ったのだが、どこに売っているのかわからない。あるコンビニで尋ねると、駅近くの出店で売っていると教えられた。ところがそこは出店ならぬサテライトであり、大学の生協で売っているという。そこで大学へ行き、生協の人に聞くと、あろうことかもう作っていないと言うではないか。

 事情を聞くと、2年前に酒がからむ事件があってそれ以来酒類は売らないことになったのだが、件の饅頭も酒饅頭であるとの理由で対象とされ、作るのもやめたとの事だった。その事件は知っていたが、饅頭にまで影響するというのはひどいと思った。

 そこで、学長に会うことにした。アポなしで行ったのだが、面会のスケジュールがぎっしりという秘書係に「できれば・・・」と言うと取り次いでくれ、割り込みが許された。実は、現学長は部活の1年後輩で、高校の後輩でもあったから、私は彼をファーストネームで呼び捨てにしてきた立場なのだ。

 まともに面談するのは、三十年ほど前の助教授だったころ以来だったが、現役時代のような感覚で(流石に呼び捨てにはしなかったが)、だらしないじゃないかと軽く叱責した。彼は「全くその通りだが、マスコミがうるさいし、この種の問題に対しては他大学も同様の対応をしており、ここだけが正論をふりかざすのは難しい」と答えた。

 なるほど・・・、社会全体がそういう風潮にあるのはもちろん知っているが、大学も例外ではないのか、というのが私の感想である。彼にも、忸怩たる思いがあるようだった。そのことがせめてもの救いだが、帰路にふと思った、A先生ならどうしただろうかと・・・。故人となってしまった今では、それを問うこともできないが、「酒はダメだが酒饅頭は別」とキッパリ言い切ったのではなかろうか。あるいは私のひいき目かもしれないし、先生にはそう言ってほしいという願望かもしれないが。



 ともあれ、私が常々思っていることが改めて確かめられた気がする。つまり、サービス業感覚の過剰な浸透が理不尽なクレームを怖れさせるようになり、逆に、まともなクレームが理不尽なものと区別されないかのような事態すら惹き起こしているのだ。それを痛感することがつい最近もあったのだが、今ここでは書かない。


 

 
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