長崎原爆の日に・・・

 平和祈念式典の中継を見ていると、献水というのがあった。水を求めながら死んでいった人達への供養のためだが、私はそういう状況を、漫画「はだしのゲン」を読むまで知らなかった。アメリカはひどいことをしたものだ、と改めて思ったものだ。

 そして、やはり当時の日本の指導層への批判をしたくなる。対米戦争は、もともと勝つ見込みのないものだった。それは、後になって言えることではなく、当時も多くの人が分かっていたことだ。有名なところでは、山本五十六は「1年かそこらなら暴れてみせる」と言ったそうだ。実際にはほぼ半年しか優勢は続かなかったが、それはともかく、どんなに遅くとも原爆が落とされる前に敗戦を受け入れることはできたはずなのだ。

 それをしなかった理由は当然一つではないが、最大のものは国体護持への不安だったらしい。「国体」を云々し始めればキリがないが、簡単に言えば「天皇を戴く国」という形が降伏によって消滅するのではないか、という不安だ。その形はほとんどの国民が当然のものと考えていた。明治維新からの国づくりの根幹であり、国民はそういう教育を受けてきていたからだ。

 もちろん、そう考えない勢力もあったのだが、超少数派に過ぎない上に治安維持法による弾圧を受けていた。

 国体を護持できなければ、たとえ領土・国民・政府が残ってもそれはもう日本ではない、という考えが指導層を支配していたようだ。戦況はすでに絶望的になっていたが、全滅か国体の変貌か、という二者択一で後者を選ぶことは躊躇されたようだ。

 そして最後に昭和天皇が登場する。日本は、摂関政治あたりから、君主たる天皇が責任を負わない政治形態に移っていく。平安時代は、摂関や上皇に押さえつけられて「責任を負えない」状態だったが、鎌倉時代からは「責任を負いようがない」にかわり、明治になって「責任を負わない」君主になった。それは、天皇に過ちがあってはまずいという考えによるものだったが、昭和天皇は二度責任を負っている。一度目は二・二六事件のとき、そして二度目がいわゆる聖断である。

 昭和天皇は、イギリスなどヨーロッパの近代的な知見をよく理解しており、この戦争についても独自の判断を持っていたように見える。だから、もっと早く聖断を仰げば原爆はなかっただろうし、ひょっとすると東京大空襲も避けられたかもしれない。あるいは対米英開戦すらなかったかもしれない。所詮「もしも」の世界ではあるが・・・、そして・・・。

 「あの戦争は何だったのか」(保坂正康・新潮新書)によれば、最後の御前会議で昭和天皇は「国体護持については自信がある」と発言したという。また、「「国の死に方」(片山杜秀・同)によれば、同じ場面で昭和天皇は「私はそう疑いたくない」と発言したらしい。「そう」とは国体護持を降伏条件にできないことを指す。

 また、昭和天皇は「自分はどうなってもかまわないから国民を助けて欲しい」とマッカーサーに言い、それを聞いたマッカーサーは、それまで通訳に[Tell the emperror]と言っていたのを、[Please tell your majesty]に代えたと伝えられている。

そういう発言はいつの時点からならなされたのか、全く不明だが、私には東京大空襲以後ならありそうに思える。



 さておき、当時の指導層が無知蒙昧だったとは思わないが、特攻などというバカげた作戦を考えるほどに追い詰められていたのは間違いない。そしてそれは、国体護持という観念にとらわれていたためであり、明治以来の国づくりの破局を意味するものだったとは言えよう。
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