「亡命者 白鳥警部射殺事件の闇」  後藤篤志

 白鳥事件を、私は高校の日本史で知った(と思う)が、詳しく教えられてはいない。また、村上国治という人が有罪になったが再審請求をしていると知ったのは大学進学後だが、さほど関心があったわけではない。3年目の後半から4年目にかけて、いわゆる公安警察のことをある程度勉強したが、その過程で白鳥事件に触れた文献に出会わなかったせいでもある。ただ、真相がわからない事件という認識はずっと持ちつづけていた。


 ところがつい最近、それを扱ったノンフィクションを本屋で見つけて即座に買い、さきほど読み終えた。改めてわかったことが、事件そのもの以外にもたくさんある。

 まず、射殺された白鳥一雄は公安畑の警部、そして村上は日本共産党札幌委員会の重要メンバーだった。当時はまだ占領下、レッドパージの時代であり、共産党は武装闘争路線をとっていた。従ってこの事件は、公安警察対共産党という構図のものだが、GHQが絡んでいることも十分あり得る。その辺は松川事件などと似ているが、はっきり異なるのは、共産党が白鳥を弾圧の中心人物として武装闘争の標的にしていたことだ。

 一方、GHQは拳銃などを含む物資の横流しをしており、白鳥はそちらも担当していてかなり実態をつかんでいたらしい。そこでGHQが彼を消し、共産党の犯行にみせかける細工をしたという構図も描ける。

 本書は、GHQ絡みは紹介するにとどめ、村上や事件にかかわったとされる共産党員たちを追い続けている。ここでは詳細に触れないが、読み終えての印象は以下の通りだ。


 村上は白鳥殺害計画の中心人物だったが実行してはおらず、実行予定者はいたが、本当にやったかどうかは当人たちだけが知っている。そして彼らは、真相を語らずに次々とこの世を去って行った。著者はなんとか語らせようとしたが、叶わなかったのだ。残る存命者も語らないに違いない。

 村上は共謀共同正犯の論理で起訴され、有罪判決を受けている。しかし、実際に共謀していたにしても、警察によって実行犯とされた人物は中国に亡命しており、時効が停止されたまま死亡したようで、彼による殺害が証明されていないし、共謀の証明も確かなものではない。すると、「疑わしきは被告人の利益に」という大原則が適用されるべき事件と理解するのが適切に思われる。ただ、様々な事情から、やった可能性はかなり高いと思うが、無実と無罪は違う。そしてGHQの犯行という線も捨てきれない。

 ともあれ、著者が追った人物たちの人生は常人には想像もつかないようなものだった。はたち前後で革命を考え、党の方針に従って行動し、警察に追われ、、ある者は転向したが多くは中国に逃れ、そのうち方針を転換した党からは疎んじられ、そして真相は墓の中まで持っていく・・・私にはとてもマネできないが、共感する部分は少なからずある。


 
 なお、著者は1948年生まれでおそらく私と同学年、北大を出てHBC(北海道放送)で記者をやった後、編集長、報道局長などを歴任しているそうだ。




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