「旧かなづかひで書く日本語」  萩野貞樹

少し前に読んだのだが、とても面白かった。

 旧かなづかひといへば丸谷才一が頭に浮かぶが、私は彼の著作をほとんど読んでをらず、何かで(「日本語のために」だったか?)旧かなを使ふべきと書いてゐたのを記憶してゐる程度である。何十年も前でほとんど忘れてしまったが、今回この本を読んで旧かなづかひのことがよくわかった。


 旧かなづかひは勉強しないと読みにくい、といふ先入観があるが、著者はそんなことはないと言ふ。ある短文を学生に読ませたら、ほとんどがスラスラ読んださうだ。そして面白いことに、別の教室で「これは旧かなづかひで書かれた文です」と教へてから読ませると、多くの学生がつっかかりながら読んだといふ。大学生なので高校で古文をやったはずだが、必ずしも古文が得意だったとは限らないのにスラスラ読めた、といふのは意外だった。

 さらに著者は、「さくらさくら」の歌詞を旧かなづかひで書いて学齢前の子供に読ませるといふ事もしてをり、例へば「にほひ」を「ニオイ」と読むことについて特別な注意はしないさうだ。その方がうまくいくらしい。

 私も試しに、あるSNSに旧かなで日記を書き、読みにくかったかどうかを尋ねてみたら、コメントをくれたのは数人だったが、そんなことはなかったといふ回答だった。ちなみに彼らの年齢は五・六十代である。

 著者も書いてゐるが、新旧で異なるのは主に「ハ行」と「ワ行」、あとは「よう」「こう」などが「やう」「かう」などになったり、「ぢ」と「づ」が時々出てくるくらいだから、改めて考へると頷ける話である。


 さて著者は、新かなづかひを制定した最大の理由が「音韻に忠実に」であることを批判してゐる。ここでは「さう」を取り上げてみる。新かなでは「そう」であり、「さう」と書いて「ソ-」と読ませるのは不合理だ、とするのが新かなの思想だが、これをローマ字で書くと「sau」となる。この中の母音「au」は、世界中でほぼ「オー」に近い発音になってゐる(ドイツ語は違ふが)。例えば英語の「August」はラテン語で「アウグスト」だったものが「オーガスト」に変化したのだが、それはほぼ必然の音韻変化によるものだ。日本語における発音と表記のずれも大半はこの法則に従ったもので、英語が「August」の表記を変へないやうに、日本語も変へる必要はない。「さう」を「ソー」と読むのがそんなに負担か?といふわけである。確かに戦後まもなくまでは皆自然に読んでゐたのだ。もちろん教育によって読めるやうになったのだが、その教育をあえて変へたのはばかげたこと批判してゐる。

 批判の理由は他にもいろいろ挙げられてゐるが、ここでは深入りしない。ただ、私としては大いに賛同できたので、この文も旧かなづかひで書いてみた。ワープロではちょっと手間がかかるが、まあ、さほどの事ではない。今後もさうしやうと思ってゐる。


 ところで、著者は漢字教育にも言及してゐる。当用漢字や常用漢字を制定したこと、さらに新字体を作ったことも批判し、正字を推奨してゐる。それに触れた章では「旧」なども正字で書かれてゐるのだが、出版社の手間を考えてそこだけ、本のタイトルも新字体である。
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こんにちは。。

春海さん、コメントありがとうございます。。
私は「旧かなづかひ」は全く違和感なく読めていますので大丈夫です。。
病院に勤めていますと、高齢者が多いので名前が「旧かなづかひ」の方もおられますし、お礼のお手紙などでも「旧かなづかひ」で書いて頂くこともありますので。。
年代関係なく、看護師は「旧かなづかひ」を読むことが自然とできるようになっていきます。

さうでしたか

  実はGOXI(囲碁のSNS)での日記も、この記事を書いてから旧仮名にし、読みにくくないか問ひかけたんですが、そんなことはないといふコメントだけでした。数は少ないし、読みにくいといふコメントはしづらかったかもしれませんが、一安心してその後もそれで書いてゐます。
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