「碁を打つ女」  シャン・サ(1)

タイトルと書評に惹かれて読んでみた。フランス在住の中国人女流作家によって書かれたこの本は、フランスの高校生が選ぶゴンクール賞を始め、各国の文学賞を受賞したという。とりあえず若者に人気が高いのは間違いない。

 物語は日中戦争前夜の満州が舞台で、千風という架空の都市に住む裕福な家庭の娘「わたし」と、日本の若い軍人「私」が主人公だ。そこには、千風広場という碁打ちが集まる場所があり、碁が強い二人はそこでゆきずりの対局者として出遭う。実は「私」にとって、広場に行くことはスパイを捜すという軍務だったのだが、彼女との出遭いはあくまでも偶然だ。そして自覚のないまま互いに惹かれ合ってゆく。「わたし」はまだ高校生で、「女」より「少女」と呼ぶのがふさわしい。
 この小説は、「わたし」と「私」が語る短い節の繰り返し、という手法で書かれている。それは最後まで続くのだが、二人が出遭うのは小説の半ばあたりで、それまで少しじれったい感じを持った。しかし作者としては、この二人がどういう人物なのかをじっくり描きたかったのだろう。出遭ったあとも、二人の会話は全くと言っていいほどなく、毎日打ち継がれる対局は、それぞれの日常の中の一場面でしかない。だから、二人が知らず知らず惹かれ合っていく過程は、後述の場面までわからない。
 しかし、もう終わりに近い頃、ようやく二人の会話が始まり、一気に終幕へと進んでいく。それは極めて悲劇的だが、究極の愛の形ともいえるものだ。少女の最後の言葉は自分の名前を告げることだったが、そこで初めて今まで名を知らずに読んできたことに気づかされた。そして男の名は読者に知らされないまま小説は終わる。

 
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