女性皇太子

 現皇太子は将来天皇になるわけだが、その時皇太子には誰がなるのだらうか。そもそも皇太子とは何か、「一言で言へば次の天皇、少しもったいぶれば皇位継承順位第一位である天皇の長男」といふのが普通の理解だらう。そしてそれは、現状では正しいし、過去に於いてもほぼ正しかった。「ほぼ」といふのは、歴史上女性皇太子が一人だけ存在したからである。奈良時代、大仏を作った聖武天皇の長女で、後に孝謙天皇、ちょうそして称徳天皇となる阿倍内親王がその人だ。天皇時代は恵美押勝や道鏡との関わりが教科書にも載ってゐるが、皇太子だったことはあまり知られてゐない。また、彼女は生涯独身で、当然子供はをらず、孝謙天皇時代の皇太子は天皇の子供ではなかった。

 さて、皇室典範には皇位継承の順位と皇族の範囲などが規定されてをり、第8条に「皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という。」とある。皇嗣とは皇位を嗣ぐ者といふ意味だが、皇子(おうじ)とは何か。第6条に「嫡出の皇子(中略)は男を親王、女を内親王とし(後略)」とある。つまり、天皇の子供が皇子であって男女の区別はない。それらは旧典範でも同じだ。ちなみに、「皇女」といふ言葉があって「皇子」が男、「皇女」が女といふ対をなしてゐるが、それは一般の用語であり、皇室典範にいふ「皇子」は上記の通りである。

 すると、現皇太子が皇位を嗣いだとき、皇太子になるべき人はゐないことになる。皇位継承順第一位は秋篠宮文仁親王だが、彼はそのとき、皇子ではなく天皇の弟だから皇太子ではない。天皇の子供は愛子内親王しかをらず、彼女は皇子ではあるが皇嗣ではないので皇太子ではない。

 皇太子と呼ばれる人物が必ずゐなければならない、とは書かれてゐないが、第8条の文言からは本来ゐるべきといふ観念が窺はれる(ただし、天皇の子が幼少の間は別)。旧典範のそれには、天皇には必ず男児があるといふ前提があり、それはまた、側室を含めた複数の妻の誰かに男児が生まれるはずといふさらなる前提に立ってゐる。だから「皇太子のないとき」とは、「皇太子が、子をなしたものの天皇にならないうちに薨去したとき」を想定してゐると考へられる。

 しかし、時代が下って昭和天皇が側室を否定し、その前提は崩れた。だから、皇太子がゐないといふ事態は90年前から想定できたのだが、誰もその問題に手をつけやうとはしなかった。だからこそ、改正された典範でも旧法を踏襲してゐる。皇国史観に立つ勢力ですら全く考へてゐなかったやうだが、近年小林よしのりが初めて指摘した(田中卓「愛子様が将来の天皇陛下ではいけませんか」)らしい。

  さて、もし女性天皇・女系天皇を認めることになれば、皇位継承順位第一位は男女関係なく皇長子であり、皇太子も男女無関係になるから、次の皇太子は当然愛子内親王が務めることになり、およそ1300年ぶりに女性皇太子の誕生となる。小泉首相時代の有識者会議が出した結論は、悠仁親王の誕生で沙汰やみとなったままだが、男系男子継承にこだはればいずれ皇統断絶は免れないのだから、断絶を避けるためにはその結論を採用するのが自然だ。ではいつやるか、林修ではないが「今でしょ」。田中卓は、その理由を「皇位が”兄弟相及ぶ”時に皇統が分裂し、乱が起きる場合が多い」からとし、壬申の乱や南北朝の対立を例に挙げる。現代に於いてそのやうなことは考へにくいが、直系で継承する方が望ましく、天皇に子がない場合のみ傍系に移すのがよいとは言へる、と私は思ふ。

* この記事は、前掲書を二年ぶりに再読して書いたものである。

スポンサーサイト
line

comment

Secret

No title

私のブログにコメントくださったので、お返しにと思ったのですが、なかなか見つけることが出来なくて難儀しました。春海という名前のブログはたくさんあるようです。

皇太子に男の子が出来なくても弟がいるし、と思っていましたが、なるほどその場合には誰が皇太子になるのか、いないではないか、ということになるのですね。

私は後継ぎがいなくなるからという心配とは無関係に男女平等の観点から女性の天皇を認めるべきだと思っていますが、皇室典範との関係は抜きにしても男系にこだわる考えが大勢のようですね。

ちなみに側室廃止の件ですが、これを明確に否定したのは大正天皇からだそうです。大正天皇は一部に伝えられるような暗愚な人ではなかったらしいというのが私の考えです。

二点

 大正天皇から、といふのは何かで読んだ覚えがありますが、確実でなかった(私としては)ので本ブログでは昭和天皇としてゐます。

 このまま代替はりを迎へた場合、弟宮に「皇太弟」といふ称号を使ふことが考へられますが、それにはやはり典範の改正が必要ですね。

 
 「お気に入り」に登録の上、またコメントをくださると嬉しいです。
line
line

line
プロフィール

丸山恒平

Author:丸山恒平
FC2ブログへようこそ!
1949年1月生まれ、還暦を期にブログを始めました。記述することは多岐にわたります。
コメント歓迎・反論歓迎・トラックバック歓迎・リンクフリーです。

BLOGRAMに登録しています。できればカレンダーの下のタグをクリックしてください。

line
最新記事
line
最新コメント
line
最新トラックバック
line
月別アーカイブ
line
カテゴリ
line
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
line
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
line
フリーエリア
line
フリーエリア
line
sub_line
検索フォーム
line
RSSリンクの表示
line
リンク
line
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

line
QRコード
QRコード
line
sub_line