民族意識 その1

 「僕らのヒーローはみんな在日だった」といふ本を読んだ。著者は、朴一(パク・イル)といふ在日三世の大学教授(商学博士)である。全く知らなかったが、TVにもちょくちょく出てゐるらしい。これまでにも、在日コリアンをテーマにした本を出版してゐるさうだが、この本は、特にスポーツや芸能でのヒーローに焦点を絞ったものだ。

 戦後日本のスポーツ界や芸能界にをいて、在日コリアンの果たした役割は大きい。しかし、多くの場合、彼らが在日であることは秘匿されてきた。著者はその背景や現状を論じてゐるのだが、これを読んでの感想といふか、考へさせられたのは、民族意識のことだった。


 そもそも、在日コリアンは差別されてきたし、現在も程度は下がったもののそれから解放されてはゐない。その原因は、日本による朝鮮統治に遡る。日本の統治下だったころに海峡を渡ったのが一世で、現在社会で活躍してゐるのは三世が多い。それはともかく、一世の来日理由は多くが出稼ぎだったやうだ。そしてそのまま住み着いて、二世・三世につながる。日本人との結婚も多いから、三世ともなると大半がハーフかクウォーターである。

 彼らの大半が日本人風の通名を持ってをり、名前だけでは在日と判断できない。そしてそれは、差別から逃れることをとりあへず可能にしたやうだ。しかし、例えば就職に際して戸籍謄本の提出を求められると、それがないために在日であることを告げねばならず、不利な結果に終わるといふこともあったらしい。

 さういふことに関係なく、実力次第といふのがスポーツや芸能の世界だ。だから、その方面に才能のある者はどんどん進出した。その際も通名で通すのは、在日であることがわかると、人気に影響するからだ。また、この世界では芸名を使ふ事もできる。

 古いところでは、力道山・金田正一・張本勲などが取り上げられてをり、彼らが在日であることは私も知ってゐたが、都はるみが在日二世(ハーフ)である事は知らなかった。彼女については、母親が何かの取材に応じたときそれを明らかにしたさうだが、「北の宿から」がレコード大賞の有力候補になったとき、父親が韓国人なのにレコード大賞などとんでもない、といふやうな抗議がかなりあったらしい。そのため、本人も受けていいものか悩んだといふ。

 時代が下ると差別意識は徐々に薄れ、公表する人も現れて来たが、人気商売にとっては勇気が必要であり、未だに少数派である。ただ、今世紀に入る頃から、最初から出自を公表し、民族名で活躍する者が次々に登場する。その中で、ボクサーで世界チャンピオンにもなった徳山昌守(洪昌守=ホン・チャンス)の話は興味深い。

 徳山は1974年生まれの三世で、格闘技が好きな少年だったが、高校生になってからボクシングに熱中し、プロを目指す。デビューにあたって、リングネームを「洪昌守」にするつもりだったが、その名前ではファンやスポンサーがつきにくいと反対され、やむを得ず通名をリングネームにした。

 その後、金沢秀雄といふ在日コリアンの元プロボクサーが、彼を世界チャンピオンにしやうと、自分のジムに迎へいれる。そして2000年5月、ついに世界戦に挑戦できることになる。しかし、在日を公表してゐる彼にはなかなかスポンサーがつかず、世界戦としては異例のTV中継なしで行はれた。そして8月、見事にタイトルを獲った彼は、その後リングネームを「洪昌守」とし、翌年5月、ソウルで前チャンピオンとの防衛戦に臨む。著者はそのときの感動などをかう記してゐる。

  :「チャンピオン、ホン・チャンス~」   私は、テレビで生中継された試合の冒頭、リングアナウンサーがチャンピオンの洪昌守を韓国語で紹介する場面を見て胸が熱くなった。在日コリアンの選手がリング上で本名で呼ばれたのは戦後初めてだったからである。(中略)何よりもすばらしかったことは、在日コリアンのボクサーが出自を公言し、本名で闘える時代の扉を開いたことではないだろうか。:

 さらに、サッカーのチョン・テセや李忠成(り・ただなり)らを取り上げてゐるのだが、ここでは割愛し、いよいよ本題である「民族意識」に移ることにしやう。


 本の内容に深入りして長くなってしまったので、一旦打ち切る。
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