「承詔必謹」と日本国憲法

 具体的には忘れたが、何かのきっかけで「承詔必謹」といふ言葉が頭に浮かんだ。これ十七条憲法だったよなと思ひながら検索すると、やはりさうだった。ひとまづホッとしたのだが、ほかに見える項目にちょっと興味を惹かれた。

 それは「承詔必謹と日本国憲法~日本国憲法有効論~」といふタイトルだったが、それだけでは意味が全然わからない。そこで読むことにしたのだが、その前にそのサイトの名称が目に入る。「出ずる日の下(もと)に立ち上がれ(旧・大日本帝國憲法入門)」となってゐた。右翼のものとわかるが、それにしては、現憲法が有効といふのは解せない。

 読んでみると・・・憲法の定義から始まってゐるのだが、それは以下の通りである。

 :憲法とは、我が国の道徳や慣習、伝統などの「不文の法」のうち、特に国家の統治に関わる規範をいいます(不文憲法)。憲法とはその本来の姿は不文の規範であり、不文憲法なのです。

そして、その不文憲法を明確にするために、「当たり前」のことながらこれらをあえて成文化し、さらに憲法規範とはいえないような技術的な事項(例えば「会計」など)を適宜付け加えたものを成文憲法(憲法典)といいます。

我が国においては、この定義に当てはまる成文憲法(憲法典)は十七条憲法、五箇条の御誓文、大日本帝国憲法、皇室典範などが挙げられます。

近代に起草された成文憲法については、「憲法とは権力の抑制と均衡を図るものである」などという説明もなされますが、これは憲法の機能の一つであって、定義ではありません。:


 なるほど、これが右翼の考へる憲法か・・・まあ、すべての右翼ではないだらうが、これまでいろいろ右翼の主張を見聞してきたが、かういふのを根本に持ってゐる事がわかれば、理解しやすい。

 さて、「承詔必謹」だが・・・。これは十七条憲法の第三条にあり、臣下が守るべき規範である。そこで、”現憲法は本来の憲法ではないのだが、昭和天皇の詔によって公布されたのだから「承詔必謹」によって従はねばならず、有効な憲法といふことになる”といふ理屈が右翼の中にあるらしい。それは帝国憲法を奉ずる者にとっては困った問題であるやうだ。

 その矛盾を「無効規範の転換」といふ法理を使って止揚する、といふのがこの文章の目的であり、中心的な部分を以下に引用する。

 :「無効規範の転換」という法理(法律学上の理論)があります。これは、「その法令の名称がどんなものであっても、その内容が憲法典に反しないものであれば(反しないように解釈し直して)、それを有効として認める」というものです。
これを理論を成文化したものが、大日本帝国憲法第76条第1項なのです。:

 帝国憲法に基づかずに成立した法律などでも、帝国憲法に反しないものであれば、社会の安定のため有効とするのがその意味であるとし、現憲法についてもそれを適用すれば「承詔必謹」に悖ることはないと論を展開する。ただし、基本的人権の尊重など、帝国憲法に反する部分は無視する。


 「無効規範の転換」といふのは聞いたことがあるやうな気がする、といふ程度だったので法律学小辞典に当たってみた。するとそれはなかったが、「無効行為の転換」といふ項目があった。詳細は省くがこれは民法上の用語で、憲法とは無縁のものだった。

 さらに帝国憲法76条第1項を見ると、帝国憲法が成立する以前からあった規範について、憲法に反しないものは有効とする、といふ内容だった。

 この論者は、帝国憲法以後に帝国憲法によらずに制定された法規にそれを当てはめるといふ誤謬を犯し、しかも民法上の法理である「無効行為の転換」を「無効規範の転換」と転用して、憲法の有効性を論ずるためその理屈を使ってゐるのだった。


 私は法律を少ししか勉強してゐないので、あまり断定的なことを言ふ資格はない。だから、上の評価が100%正しいと言ふ自信はないが、「承詔必謹」と現憲法は無効だといふ主張を整合させるために、相当な無理をして理屈をひねり出したのだとも思ふ。しかし、同じ事を書いてゐる別のサイトもあったので、右翼勢力ではそれなりの説得力を持って受け入れられてゐるのかもしれない。



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No title

憲法に独自の定義を与えることはどうぞご自由にと言うしかありませんが、それが憲法としての規範性を有するゆえんは説明することが出来ないでしょう。
真実と事実を使い分けて説明するのが学問ではなく宗教に過ぎないのと同様、好き勝手に定義した憲法は宗教上の存在にすぎないというべきです。

お示しの憲法論は、なんだか、源義経が大陸に渡ってジンギスカンになったという話を思い出させてくれます。

みこさんへ

  僕の評価で間違ひないと理解しました。ありがたうございます。

無い法理

 要するに、「無効規範の転換という法理」などないのである。

 「聞いたことがあるやうな気が」したのは、半世紀近く前の学生時代、民法を少し勉強したときに「無効行為の転換」をちょっとだけ囓り、その記憶が曖昧に残ってゐたためだらう。
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