「戦後」の終焉

 敗戦以来ずっと、「戦後」といふ言葉が使はれてきた。「今年は戦後〇年」は毎年8月にはマスコミを賑はすし、8月以外にも結構耳にする。私が若いころよく使はれ、自分も使った言葉に「戦後民主主義」がある。それは「大正デモクラシー」との対比で言はれたのではないかと思ふのだが、ともあれ近年はほとんど聞かれない。

 「戦後」を冠にした熟語はこれしかなかったやうに思ふのだが、最近新しいものができた。それは「戦後レジーム」で、誰が言ひ始めたか正確には知らないが、安倍首相ががよく使ふのは間違ひない。それは「戦後レジームからの脱却」といふフレーズを作るのだが、その意味するところは、アメリカから押し付けられた憲法を自前のものに代へ、真の独立国家たらんとすることらしいが、内実は帝国憲法の方向に戻すことのやうだ。

 その一環として最も力を入れてゐるのが憲法9条の解釈変更だ。これは本来改憲を要する事なのだが、ハードルが高いため、解釈によって現実との整合性を工夫してきた歴史がある。それでも、集団的自衛権の行使は認めないといふ一線は守られてきた。しかし、昨年閣議で部分的に認めることに変更し、それに基づいて所謂安保法制を整備してきた。

 
 さて、本題の契機は「駆けつけ警護」である。これは、国連PKOに参加してゐる自衛隊に与へられる新たな任務で、NGOなどが攻撃された場合に現場に駆けつけて警護するといふもので、その際武器の使用も許される。つまり、戦闘が行はれる可能性があるのであり、自衛隊員に死傷者が出るかもしれない。

 PKOに参加した経験のある元自衛隊員に聞いたのだが、宿営地に流れ弾が飛んでくることはよくあったさうだ。幸い死傷者は出なかったが、駆けつけ警護なら流れ弾ではなく、狙った弾丸が飛んでくることになる。死傷者が出ない方が不自然と言ふべきだ。

 12月にその任務を実行させる事こになるらしいが、今国会ではそれについての議論も行はれてゐる。そもそも、PKO参加五原則といふものがあって、その一つに、紛争当事者間に停戦合意が成立してゐることがある。スーダンと南スーダンの間にそれはあるのだが、現地では、政府軍と反政府軍による内戦が進行してをり、7月には首都ジュバで300人ほどが死ぬ戦闘もあった。しかし安倍首相は、そこで衝突はあったが戦闘は行はれてゐないと答弁してゐる。だからPKO派遣は適法であり、駆けつけ警護もリスクの高いものではないとする。

 かういふ詭弁がまかり通ってゐる以上、駆けつけ警護は実行されることになりさうだ。そこで戦闘になる確率は高く、死傷者が出る可能性も低くはない。いづれにしろ71年間やらなかった戦争が起きる。即ち「戦後」の終焉である。仮にさうなった場合、政府は「これは戦争ではない」などと言ふに決まってゐるが、そんな「大本営発表」を「安倍様命・稲田様命」の右翼以外、だれが信じるだらう。

 もし死者が出たなら、靖国神社は彼を戦死者として祀るはずだ。反対もあらうが、一宗教法人の行為を禁じることはできない。靖国が合祀を強行すれば、ある意味「戦後レジームからの脱却」が成就する。安倍首相の言説からは戦前回帰を望んでゐるのが窺はれるので、敢えて強引に解釈すれば、さういふ事態を狙ってゐるのかもしれない。
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