新たな対立軸? 女系天皇の続き

多くの国民は皇室の断絶を望んではいないだろう。しかし、皇位継承を男系男子に限り、側室もなく、宮家も現状のままなら、断絶の危機が訪れるのは当然だ。少子化が進んだ時代に、皇室だけが子だくさんというのは考えにくいし、生まれた子の半分は男子という保証もない。また、側室を認める事は国民感情が許さないし、当の皇室でも先代から否定されている。断絶の危機を防ぐために残る方法は旧宮家の復活だ。将軍家を男系男子で存続させようとした徳川御三家のようなものだが、廃止からの時間経過や財源上からも問題があり、何よりも平等原則の例外を増やすのは時代の逆行、と考える人が多いと思う。宮家となれば、男子には職業選択の自由もないし、結婚の自由も制限されるのだ。

 男系男子が望ましいという感覚はあっても、それに限定して存続を危うくするより、平等原則拡大の意味も含めて、女性天皇とそこから始まる女系天皇を認める方がいいというのが、一般的な傾向ではないだろうか。雅子妃の(男子出産プレッシャーという)精神的な苦しみに多くの国民が同情したのは、その一つの証明かと思う。つまり、価値観の変更はすでにかなり進行しているのだ。

  
 4年前の有識者会議の結論はそういう認識に立ってのものと思われるが、価値観の変更を「日本文化の崩壊」ととらえる人たちには評判が悪い。そして上記の一般的傾向については、文化の無理解という見方をするようだ。あくまでも男系男子継承を守ることを主張し、その方法として旧宮家の復活を提案する。財源については、現在の皇室費が国民一人当たり250円程度(年間)であることを示し、それが数倍になっても大した額ではないとしている。また、すでに一般人として60年以上生活している当事者達にとっても違和感があるだろう、という指摘に対しては、2世代ほど経過すれば元に戻ると推測している。

 妥当な見解かもしれない。もし男系男子が望ましく、何としても守る価値があると考えるなら、その程度の負担には耐えられるだろうし、60年ほどの時間であれば、同じくらいかけて宮家の感覚を取り戻すことは可能だろう。

 だから問題はやはり価値観に帰着するのだが、ここで別の側面に触れることにしよう。旧宮家の廃止自体がGHQによる日本文化破壊の長期的戦略である、という見方が男系男子維持派に多く、それは戦後の一般的な歴史認識を「自虐史観」あるいは「東京裁判史観」とし、その持ち主を「反日」と排斥する思想につながっている。つまり、日本の近現代をどう見るかという大きな対立にも関わり、そこに踏み込むと思想闘争の様相を帯びてくるのだ。

 男系男子維持派は、天皇は日本文化の中核をなす存在と見る。千数百年男系男子で継承されてきたのは、それが正しい血統保持の方法と考えられてきたからであり、それが揺るぎない価値観だとする。女系天皇を認めると、血統自体は途切れなくてもゆがみが生じてまずいというわけだ。皇国史観に立って、神武天皇から連綿と続く由緒正しい血統が穢されると言う人もいるくらいだ。とにかく、女系天皇は日本文化の中核をぐらつかせ、ひいては崩壊に至ると主張するのだ。

 加えて反「反日」勢力は、宮家の範囲を広げれば安心なのに、それに反対するのは、GHQの長期戦略に乗った「反日」の深慮遠謀だとする。すると「反日」レッテルを貼られた者が、そっちこそ皇国史観を復活させようとする右翼の回し者だと応酬する・・・かどうかはさておき、そういうムードが漂い始める。

 もちろん、そういう対立とは無縁にそれぞれの主張をする人たちも多いだろうが、思想対立(女系を認めるか否かがすでに一つの思想対立ではあるが)は声が大きくなるから、注目度が高くなりがちだ。そしてそれに無縁だった人をも巻き込む事になる可能性が高い。それが、1970年代から80年代にかけて消滅していった、大きな思想的対立軸の新たな登場になるのかもしれない。
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